一斉送信メールは、同じメッセージを複数人宛に一度に送りたい場合に便利な機能です。しかしながら、一斉送信メールには、メールの誤送信、情報漏洩、迷惑メール判定など、さまざまなリスクがあることも理解しておかなければなりません。
そこで本記事では、安全に一斉送信メールを送るための基礎知識から、起こり得るリスク、メール送信時の注意点などについて詳しく解説します。
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【目次】
一斉送信メールとは、同じメッセージを複数の受信者に同時に送信する行為のことを指します。数人から数十人程度の小規模なものから、メールマガジンのような大規模なものまで、2人以上に同じ内容のメールを同時送信するものは、一斉送信メールに含まれます。
一斉送信メールを送る主な用途は以下の通りです。
これらは、一斉送信メールの大きな枠組みであり、それぞれの企業やグループごとに、さらに細分化された様々な用途で活用されています。
一斉送信メールと似た仕組みとして、メーリングリストについても少し説明しておきます。メーリングリストも同じメールを複数人宛に送る点は同じですが、メールを送信するまでのプロセスが異なります。
通常、一斉送信メールは、宛先として複数のメールアドレスを設定するのに対して、メーリングリストは、事前にメールアドレスを登録したリストを作成し、メール送信用の専用メールアドレスを宛先として設定します。
専用メールアドレスを一つ設定するだけで、複数人にメールを送ることができるため、メール送信を効率化できるメリットがあります。ただし、メーリングリストはセグメント配信や分析機能が無いため、メールマガジン等には不向きです。一般的には、プロジェクトメンバー間の情報共有の方法として利用されています。
通常、メーリングリストは、ご利用のメールサーバーのコントロールパネルから作成することができます。また、Googleアカウントサービスの「Googleグループ」などでも作成することができます。
一斉送信メールは、効率的なコミュニケーション手段ですが、様々なリスクを引き起こす可能性があることを理解しておく必要があります。
一斉送信メールを送信する際に、宛先や内容を間違えて設定してしまった場合、多くの人に誤った情報が伝わってしまいます。特に、企業の機密情報などが含まれるメールには注意が必要です。
メール送信が完了してしまうと、もう取り返しがつかないため、一斉送信メールを送る前には、送信前の二重チェック、テストメール送信、複数人によるチェック、承認後のメール送信など、誤送信が起こらないような対策やルールを作っておくことが重要です。
誤送信、添付ファイル間違い、メールアカウントへの不正アクセス、内部者による不正行為、マルウェアの攻撃などによって、メールから個人情報や企業の機密情報などが漏洩する可能性があります。それが大量の一斉送信メールであった場合、その被害は甚大なものになります。
情報漏洩を防ぐための対策としては、パスワード管理の徹底、二要素認証によるログイン、アクセス制限、添付ファイルの暗号化、メールセキュリティに関する社員教育、メールサーバーやメール配信システムのセキュリティ強化などが挙げられます。
これらの対策を組み合わせることで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
大量の一斉送信メールは、迷惑メール判定を受ける可能性が高くなります。理由は、迷惑メールの手口として、ボットネットによる大量一斉送信メールが使われているため、”大量のメールを一斉送信する”という行為自体に、ISPの迷惑メールフィルタが敏感に動作するためです。
そのため、迷惑メール判定を受けにくくするためには、送信元ドメインに対する ISPからの評価(IPレピュテーション)が高いことがとても重要になります。IPレピュテーションが低い一斉送信メールは、迷惑メール判定を受ける可能性が高くなります。
一斉送信メールの迷惑メール対策については、以下の記事も参考にしてみてください。
通常、一斉送信メールを送るには、「メールソフト」か「メール配信システム」を利用します。
ここで言うメールソフトとは、PCにインストールされているメールソフト(Outlook等)、スマートフォンやタブレットにインストールされているメールアプリ(Apple Mail等)、クラウド上で動作するWebメール(Gmail、Yahoo!Mail等)などを指します。
メールソフトで一斉送信メールを送る方法は、宛先(TO、CC、BCC)に複数のメールアドレスを設定するか、事前に作成したメーリングリストの専用メールアドレスを宛先として設定します。
また、メールソフトの中には、事前に連絡先グループのリストを作成して、一斉送信メールを簡単に送るための機能を備えているものもあります。
メールソフトを使った一斉送信メールは、プロジェクトメンバー間の情報共有や、小規模グループの連絡メールなど、数人から数十人程度までの宛先に留めるようにしましょう。宛先の数が多くなればなるほど、誤送信や迷惑メール判定を受けるリスクが高くなります。
メール配信に特化した専用システムや、SFA・CRM・MA等にパッケージされたメール配信システムなどがあります。近年はクラウド型のシステムが主流になりますが、セキュリティ要件の問題でオンプレミス型を利用する場合もあります。
メール配信システムから一斉送信メールを送るには、宛先としてメールアドレスリストをCSVインポートするか、データベースに登録されたメールアドレスリストを宛先として設定します。
メール配信システムは、一斉送信メールを送ることを前提に、配信エンジンやセキュリティ機能などが設計されているため、不特定多数に対して、大量のキャンペーンメールなどを送る場合に向いています。
大量の一斉送信メールを送信する場合には、メール配信システムを利用することをお勧めします。前述したように、メール配信システムは一斉送信メールを送ることを前提に設計されているため、リスクを最小限に抑えながら、安全かつ効率的に一斉送信メールを送ることができます。
一斉送信メールに、メール配信システムを利用する主なメリットは以下の通りです。
メール配信システムを利用するメリットについては、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
ここからは、一斉送信メールを送る場合に考慮すべき、主な注意点についてご紹介します。
一斉送信メールは多くの個人情報を扱うことになるため、個人情報保護とセキュリティ強化を目的として、メール配信システムへのアクセス制限や、オペレーター管理、アクセスログの管理などを行うことが大切です。
具体的には、管理者、編集者などの役割に応じた権限の付与や、IPアドレスによる外部からのアクセう制限、二要素認証を使った管理画面へのログインなどを導入することによって、個人情報の安全性や機密性を確保することができます。
STARTTLSとは、暗号化されていない通信を、SSL/TLSの暗号化通信に切り替える技術のことです。メールを暗号化せずに送った場合、データの盗聴や改ざんが起こる危険性があります。企業の機密情報や、大量の一斉送信メールは標的になりやすいため注意が必要です。
STARTTLSによってメールが暗号化されていれば、たとえ外部からの不正アクセスがあっても、メールの内容や送信者・受信者の情報は暗号化によって理解することができません。
STARTTLSによるメールの暗号化を利用するには、メールサーバーがSTARTTLSに対応している必要があります。社内のメールサーバー管理者や、ご利用のメール配信サービスに確認をしましょう。
メールマガジンなどマーケティングを目的とした一斉送信メールを送る場合には、事前にメール受信者の許可を取る必要があります。これは個人情報保護、法令遵守、顧客との信頼構築などにとって非常に重要です。
許可を取らずに一斉送信メールを送った場合、多くの受信者に迷惑メールとして見なされ、メールの配信解除や、迷惑メールとして通報される可能性が高くなります。結果として企業の信頼性や、ブランドイメージを低下させることに繋がります。
メールアドレスリストを購入して、そのリストに対して一斉送信メールを送ることは、重大なリスクを伴うため、絶対に行うべきではありません。「販売しているのだから構わないのでは…?」と考えるのは間違っています。
購入したメールアドレスは、メール受信者の許可を取っていないのはもちろん、存在しないメールアドレスや、スパムトラップ※のメールアドレスも含まれている可能性があります。
もしも購入したメールアドレスリストに一斉送信メールを送った場合、以下のようなリスクを負うことなります。
メール配信数を増やしたいからといって、安易にリストを購入してしまうと、取り返しのつかないことになります。正当な方法でメールアドレスを収集し、質の高いメールアドレスリストを作成することが重要です。
※スパムトラップとは? スパムトラップとは、許可を取らずに不正なメールを送信する行為を取り締まるための手法です。 スパムトラップ用のメールアドレス(存在しないメールアドレスや長期間利用されていないメールアドレス)に、許可無くメールが送信されると、即座に迷惑メールとして判定されます。 スパムトラップに引っ掛かると、最悪の場合、送信ドメインがブラックリストに登録され、該当ドメインから送信されるメールがほとんど届かなくなります。 |
従来のメール送信量に対して、急激にメール送信量を増やすと、ISPの迷惑メールフィルタが動作し、メールの遅延や不達が発生する可能性があります。これはスロットリングと呼ばれ、急激な大量送信を防ぐためのISP側の対策です。
特に、新しいドメインや、IPレピュテーションが低いドメインから一斉送信メールを送る場合は注意が必要です。徐々にメールの送信量を増やしながら、ISPからの評価を高めて行く作業が必要になります。
メール送信量を徐々に増やし、目標通数を送っても、メールの遅延や不達が起こらなくなれば、送信ドメインのIPレピュテーションが高まったと判断できます。遅延や不達が多ければ、配信通数、メールアドレスリスト、メールコンテンツなどを見直し、さらに評価を高める必要があります。
正当な方法で集められたメールアドレスリストであったとしても、定期的にメールアドレスリストをクリーニングすることが非常に重要です。メールアドレスリストは、絶えず更新されているため、リストから削除すべきメールアドレスが蓄積されてしまうことがあります。
以下のようなメールアドレスはリストから削除するようにしましょう。
クリーンなメールアドレスリストを維持することによって、ISPからの評価が高まり、メールの到達率も高くなります。また、不要なメールアドレスを削除することで、無駄なメール配信コストを削減することもできます。
マーケティングを目的とした一斉送信メールを送る場合は、メールアドレスリストをセグメントして、コンテンツの内容をパーソナライズしたメールを送るべきです。理由は、メールマーケティングの効果を最大化するためです。
セグメントされたメールアドレスリストに対して、ターゲットユーザーの興味を引くパーソナライズされたコンテンツを送ることによって、メールの開封率、クリック率、CV率などを向上させることができます。
また、セグメント&パーソナライズが施されたメールは、ユーザーにとって価値高いコンテンツとして認識されるため、メールの配信解除率を低く抑えたり、メール分析の精度を上げる効果も期待できます。
小規模、大規模に関わらず、一斉送信メールを送る前には、入念なチェックを行うことが重要です。必ずテストメールを送信し、複数人によるチェックを行うようにしましょう。メールの誤送信や迷惑メール判定を受けるリスクを低く抑えることができます。
以下の点を重点的にチェックすると良いでしょう。
毎回のことで面倒に感じるかもしれませんが、油断していると思わぬミスが発生することがあります。チェックリストを活用するなどして、メールの品質を高く保つ努力をしましょう。
前述した通り、大量の一斉送信メールは、ISP側の迷惑メールフィルタが敏感に動作するため、送信元ドメインの信頼性(IPレピュテーション)が高いことが重要になります。
IPレピュテーションを上げる基本的な対策として、メール送信元ドメインの認証を行いましょう。送信元ドメイン認証は、送信されて来たメールが本当にそのドメインから送信されたものかどうかを検証するための仕組みです。
主な送信元ドメイン認証には、SPF、DKIM、DMARCの3つが挙げられます。SPFとDKIMについては両方とも設定することをお勧めします。また、2024年2月以降、Gmailアカウント宛に、1日5,000通以上のメールをGoogleアカウント宛に送る場合は、SPF、DKIM、DMARCの3つを設定していないと、迷惑メール判定を受ける可能性があります。
以上、一斉送信メールの基礎知識と注意点についてご紹介しました。
メールソフトを利用した小規模な一斉送信メールについては、宛先間違いや添付ファイル間違いによる誤送信や情報漏洩に、特に注意が必要です。
メール配信システムを利用した大規模な一斉送信メールについては、誤送信や情報漏洩に加えて、迷惑メール判定を受けるリスクが高くなるため、ISPからの評価を高く保つための対策を継続的に実施することが重要になります。
今回ご紹介した内容を参考に、一斉送信メールの用途や規模に応じた、適切な方法を選択するようにしてください。
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