企業によって、メールマーケティングの定義や位置付けは様々です。今回は、アメリカを中心にミレニアル世代、インスタグラム世代に現在爆発的な人気を誇るコスメブランド『Glossier(グロッシエー)』による、徹底したブランディングのもとに配信されるメールマーケティングをご紹介します。
? ? : https://t.co/8wyO0Xxap7 pic.twitter.com/b355PmuDDq
— Glossier (@glossier) April 9, 2019
Glossierは、デジタルネイティブ世代、ミレニアル世代の間でカルト的な支持を集めているスタートアップのD2C(直接商品を消費者に届ける”Direct to Consumer”)型コスメブランドです。「人工的ではなく人本来の美しさを彩ること」を謳い、製品ラインナップは主にスキンケアを中心となっています。Glosssierのキャッチフレーズは「現実の生活に触発されたコスメティック」です。
Glossierは、2019年4月時点では日本未上陸となり、限られた通販サイトでのみ購入が可能です。
Glossierは、現在のCEOエミリー・ワイスが開設した女性向けの美容、スキンケアのコツなどを紹介するブログ「Into the Gloss」が起源です。Vogueでアシスタントとして働きながらブログの運営を続け、2010年には月間1,000万PVを誇るまでに成長しました。2013年にベンチャーキャピタルから出資を受け、キュレーション型のECサイトを開設、翌2014年にはオリジナル製品の販売を開始します。
Glossierはインスタグラムで約150万人のフォロワーを持つほどに成長しています。また、Allure、Teen Vogue、Glamour、Nylon、Women’s Wear Daily、Cosmopolitanといった大手メディアによってトップ・ビューティブランドとして選出。さらにスタートアップ企業としての評価も高く、WWD Beauty Inc.の2015 Digital Innovator of the Year賞の受賞、Fast Companyによって2017年の最も革新的な企業の1つに選出、そして2018年にはLinkedInによってトップ・スタートアップ企業にも選出されています。
Glossierが目指すのは「民主的な美しさ」。ワイスは「Glossierのポイントは、日々利用する製品に対する声を聞くという民主化された美しさ」と語っています。顧客とのオープンな会話の機会を設けることでそれを実現しています。
2015年はブログで「あなたが思う夢の洗顔フォームはなに?」と問いかけ、そこに集まった300以上のコメントを元にアイデアをクラウドソーシングし、ユーザーと共に新商品を開発しています。翌年も新たな保湿剤のために再び同様の戦略を行い、1,000以上のコメントを集めることに成功しています。
このように、商品コンセプトからプロモーションまで、Glossierは顧客とのインタラクティブな関係を中心として活動しています。Forbesの記事によると、Glossierは、こうした5つのC:Consumers(消費者)、Content(コンテンツ)、Conversations(会話)、Co-creation(共創)、Community(コミュニティ)に貢献することで現在の成功を収めているといわれています。
ロイヤルカスタマーたちはGlossierに対して友人と同じように接し対話しながら、耳を傾けます。直近(2019年4月時点)で調達した資金も、オンライン上の独自のフォーラムを構築するために利用するようです。
Glossierは、自らが目指す『民主的な美しさ』は、メールマーケティングでも実施されています。一方通行になりがちなメールマーケティングにおいて、彼らがどのようなコンテンツを発信しているのか、いくつかご紹介します。
引用元:7 sensational abandoned cart emails
Glossierは、ニュースレター、新製品訴求のシナリオメール、カゴ落ちなどのオートメール、カスタマーサポートメールなどを配信しています。これらの異なる目的のメールにおいてもレイアウトは一貫しており、インスタグラム世代を魅了するような美しい画像、とても短く気の利いたテキスト、青いCTAボタン、絵文字のようなアイコンといった構成で基本的に統一されています。
上記の画像はカゴ落ちメールですが、レイアウトは統一されており、件名も「忘れてはいませんか?」といった一般的なものではなく「世界で最もさみしいカート」と、顧客の興味を引き付けるテキストを用いています。
「ブランドはとても重要です。ブランドこそ全てともいえます」 CEOのエミリー・ワイスのこの発言からも分かる通り、このようにあらゆるチャネルにおいて徹底して統制されたレイアウトが用いられています。
⚡️ The Supers ⚡️ three concentrated serums packed with essential nutrients to refill your skin’s deficiencies. https://t.co/7SVwGUxGaP pic.twitter.com/mYv3og2zE8
— Glossier (@glossier) February 19, 2017
上記で紹介したような、インスタグラム世代受けする画像と短い文言を用いたシンプルなレイアウトは、ステップメールによる新製品の訴求でも使用されています。以下は、2016年にリリースされた美容液「Supers」のキャンペーンの事例です。
スキンケアのルーティンの流れとともに自社の既存製品を紹介。美容液を塗るステップだけ商品の紹介をしていません。このルーティンに当たるのが新商品です。
ここで、新製品がくることを改めて伝えます。とはいえ商品画像や詳細はまだ見せず、あくまでティーザー的なコンテンツを送り、ユーザーの期待値を高めます。
「Glossierの新しい美容液です」という件名とともに、いよいよ製品の詳細を紹介します。とはいえメールのレイアウトはこれまで同様に至ってシンプル。リンク先で詳細を見ることができます。
4つ目のステップは、新たに発売する数種類の美容液が、それぞれどのようなシーンで効果的かを説明する内容です。問題解決型のコンテンツを案内し、新製品に期待できることをより具体的に示しています。
ステップ1で示した日々のルーティンを用いて、新製品と前後するルーティンの既存製品も併せて紹介し、クロスセルを狙います。
最後のステップでは、厳選された新製品ユーザーのインスタグラム画像を掲載。Glossierの最も強みである、ロイヤルティの高いファンそのものをコンテンツにしています。
ひとつのキャンペーンの中に種類別の訴求を行い、伏線を回収し、最後にユーザーの写真を用いることで、彼らのステートメントともいえる「民主化された美」を共有する。ビッグデータやそれを踏まえた複雑な分岐などを用いるのではなく、徹底したブランディングのもと高いクオリティのキャンペーンを展開していることが伺えます。
こちらのサイトでは、これらのステップが実際に送られたメールのキャプチャとともに紹介されていますので、是非ご覧ください。
緻密に考えぬいたステップメールだけでなく、Glossierは以下のようなニュースレターも送っています。
Great email marketing, @glossier pic.twitter.com/y2anPNOyxU
— Bridget Willard (@YouTooCanBeGuru) March 23, 2018
「メールの中に美しいバスタブがあります」という件名のメールを開くと、「まるで本物のバケーションのような心地よさ」という見出しとともにバスタブの画像が。その下には「OK。受信ボックスに戻って」というテキストが書かれています。
売り込みは一切なく、読んだ読者を微笑ませ、ブランドに対して良い感情を抱かせるような方法です。ソーシャルメディア上でもGlossierのメールについて言及しているファンも多く、受信者と友人との会話のきっかけにもなっているのです。
他にも同種のニュースレターのコンテンツとして、犬やひつじ、アイスクリームなどの画像を用いた可愛らしくユーモアに満ちたメールが届けられているそうです。
カスタマーサポートのメールも評判が良いようです。こちらは、間違った商品をオーダーしたのちのサポートがとても素晴らしかったというユーザーのツイート。
Would like to take this opportunity to shout about how amazing the Glossier customer service is ?? my best friend told me how great they were and I can confirm ? and you can tell it’s a real life person replying to emails not just the same regurgitated speech ?
— emily ? (@emilyakerman) March 20, 2018
こうした評判の背景には、メールやソーシャルメディアなど各チャネルごとに対応する”gTeam”と呼ばれる30人のエディターの存在がおり、とても重要な位置付けであるとCEOのエミリー・ウェイスは語っています。1年近くこのgTeamに携わってきたMallory Pendletonは次のように述べています。
「私たちは、顧客がロボットと対話しているように思って欲しくありません。gTeamの全てのエディターは、ユニークな個性と異なる特徴をもっており、回答もそれぞれです。」 引用元:How Glossier’s gTeam is changing the definition of customer service |
Glossierの企業理念と共にメールマーケティングの事例を簡単にご紹介しました。企業価値や商材によって参考にできる部分と出来ない部分はあるものの、前半にご紹介した5Cという顧客とのコミュニケーションを最も重要視する理念を、あらゆるチャネルで徹底する姿勢には学ぶべきものが多くあります。
シリーズDラウンドで1億ドルの資金調達を達成した後、2019年3月にはユニコーン企業の仲間入りをし、今後もますます目が離せないGlossier。彼らのマーケティングにご興味があれば、ソーシャルメディアのフォローだけでなく、ニュースレターもご登録されてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。