メールマーケティングを実施しているものの、「正しい効果測定の方法がわかならい」「どこを改善すればいいかわかならい」と感じている方は多いのではないでしょうか。
本記事では、まずメールマーケティング分析とは何かを解説した上で、チェックすべき代表的な指標、分析の進め方、主な分析ツールまでを解説します。
これから分析に取り組みたい初心者の方はもちろん、すでにメール配信を行っている中級者の方にも役立つ内容になっています。
メールの成果が一目でわかる分析画面 |
【目次】
メールマーケティング分析とは、配信したメールの効果をさまざまな指標で数値として把握し、次回の施策改善につなげる作業です。例えば、開封率やクリック率といった指標を確認し、反応が良かった点や改善すべき点を見つけていきます。
分析のアプローチは、大きく2つに分けられます。
1つは、1通ごとのメールに注目する方法です。件名、本文、リンク先など、特定のメールに対する反応を個別に見ていきます。
もう1つは、複数の配信を時系列で比較し、全体の傾向を分析する方法です。過去のデータをもとに、開封率・クリック率・コンバージョン率などの推移をチェックし、成果の変化や改善の効果を評価します。
こうした分析を継続することで、メール施策はより効果的なものへと成長していきます。
メール担当者のよくある課題として、「配信作業で手一杯で、分析まで手が回らない…」という声をよく耳にします。
しかし、分析をしないまま配信を続けていると、施策の成果が見えず、時間や予算が無駄になってしまうリスクを抱えることになります。
では、なぜ分析が必要なのでしょうか? 主な理由は以下のとおりです。
メールの分析は、メールの作成や配信と同じぐらい重要なプロセスです。成果につながるメール施策を継続的に実行するためにも、分析は欠かせない取り組みとして位置づけましょう。
メールの成果が一目でわかる分析画面 |
ここからは、メールマーケティングの「代表的な分析指標」と「応用的な分析指標」について解説します。これらの指標を正しく読み取り、改善に活かしていくことが、成果につながるメール運用の鍵になります。
指標を見る際に意識すべきことは、「業界平均と比べれば良い」といった表面的な判断ではなく、「自社の過去の数値と比べて、改善しているか?」という視点です。
メールの種類や目的、リストの質によっても指標の数値は大きく異なります。そのため、他社の漠然とした平均値を追うのではなく、継続的な配信を通じて、自社なりのベンチマーク(基準値)を見つけていくことが、より本質的な改善につながります。
開封率は、配信したメールが受信者にどれだけ開かれたかを示す指標です。件名や差出人名が読者の関心を引けたかどうかを測る目安となります。
数値の見方・注意点 |
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開封率は、HTMLメールに埋め込まれたトラッキングピクセル(画像の読み込み)によって計測されます。そのため、テキストメールでは開封率はカウントされません。 また、Appleの「メールプライバシー保護」機能の影響で、実際には開かれていなくても開封済みとカウントされるケースがあるため、100%正確な数値とは言えない点に注意しましょう。 |
改善のヒント |
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・過去の件名から開封率が高い傾向を分析する ・配信リストをセグメントして最適なターゲットに送る ・配信時間・曜日をテストして最適化する ・差出人名やプリヘッダーテキストも改善ポイントになる |
クリック率は、開封されたメールの中で、リンクがどれだけクリックされたかを示す指標です。コンテンツの魅力や導線設計の良し悪しを測る目安になります。
数値の見方・注意点 |
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クリック率は、メール内のリンクがクリックされた割合で計測されます。リンクの配置や数が多すぎると分散し、全体のクリック率が下がる可能性があります。 |
改善のヒント |
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・最もクリックされやすい位置に主要なリンクを配置する ・ボタンやテキストリンクの視認性や表現を工夫する ・1通のメール内のリンク数を絞り、明確な導線をつくる |
コンバージョン率は、メールからWebサイトなどに誘導されたユーザーが、購入や問い合わせなどの成果(CV)に至った割合を示します。メールの訴求力に加え、遷移先のWebサイトの内容や動線まで含めた、施策全体の成果を評価するうえで重要な指標です。
数値の見方・注意点 |
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メール配信システム側で集計されるCV率に加えて、GA4などのアクセス解析ツールと連携すれば、ユーザーの行動や流入経路をより詳しく把握できます。連携には、メール内のリンクに適切なパラメータ(例:UTMパラメータなど)を設定する必要があります。 |
改善のヒント |
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・コンテンツと遷移先ページの整合性を高める ・明確なアクションを促すCTAを設置する ・Webサイト側のLPやフォームを最適化する |
エラーメール率は、配信したメールのうち、送信に失敗したメールの割合を示す指標です。配信リストの品質の良し悪し測る目安になります。
数値の見方・注意点 |
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エラー内容には、継続的なエラー(存在しないアドレスなど)と、一時的なエラー(メール容量オーバーなど)に分かれ、繰り返しエラーが発生する場合は、該当アドレスの除外や、配信リスト自体の見直しが必要です。 |
改善のヒント |
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・何度もエラーになるアドレスを定期的に除外する ・メルマガ登録フォームをダブルオプトインにする ・SPFやDKIMなどの送信ドメイン認証を設定しブロックを防ぐ |
配信停止率は、メール配信後に購読解除されたユーザーの割合を示します。配信コンテンツと配信ターゲットのミスマッチや、配信頻度が適切であったかどうかを測る目安になります。
数値の見方・注意点 |
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一時的に増加することもあるため、直近のコンテンツ内容や配信頻度と合わせて傾向を見ることが大切です。ただし、配信リストの品質が低い場合は、リスト自体の見直しが必要になります。 |
改善のヒント |
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・配信ターゲットに合ったコンテンツを配信する ・過剰な売り込みなど信頼を損なう表現は避ける ・受信者に負担をかけない配信頻度を設定する |
モバイル開封率は、受信者がスマートフォンなどのモバイル端末でメールを開封した割合を示す指標です。モバイルでの閲覧傾向を把握することで、デザインや配信タイミングの最適化の目安になります。
数値の見方・注意点 |
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受信者がどのデバイスでメールを開封したかを測定することで、モバイル最適化の必要性を判断することができます。モバイルでの開封率が高い場合、メールに加えて、遷移先のWebサイトも含めたモバイル最適化が必要になります。 |
改善のヒント |
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・レスポンシブデザインのHTMLメールを作成する ・モバイルユーザーを意識した時間帯に配信タイミングを調整する ・ファーストビューで重要な情報を届けるデザイン設計にする |
開封曜日・時間は、受信者がメールを開封した曜日や時間帯を集計した指標です。開封されやすい時間帯を把握することで、配信のタイミングを最適化する目安になります。
数値の見方・注意点 |
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メールの種類やターゲットによって、最適な曜日・時間帯は異なります。過去の配信データを基に、成果の出やすい配信のタイミングを見つけることが重要です。例えば、配信直後に開封数やクリック数が集中していれば、配信タイミングが適切である可能性が高いと判断できます。 |
改善のヒント |
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・短期間の結果で判断せず一定期間の傾向を分析する ・曜日・時間ごとのクリック率やCV率も合わせて分析する ・配信ターゲットの生活リズムを考慮して配信タイミングを決める |
クリック分布率は、メール内のどのリンクやボタンがクリックされたかを可視化した指標です。ヒートマップで表示されることが多く、ユーザーの視線や関心を分析するのに役立ちます。
数値の見方・注意点 |
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メール全体のリンクのクリック数に対して、どのリンクがクリックされたかを割合で表示します。リンクの位置や文脈によってクリック率は大きく変動します。クリック率とコンテンツの配置を重ね合わせながら分析することで、改善点を見つけやすくなります。 |
改善のヒント |
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・ファーストビュー内に重要リンクを配置する ・クリックされやすいボタンのラベルのパターンを分析する ・ユーザーにとって不要だと判断できるリンクは削除を検討する |
メールの成果が一目でわかる分析画面 |
ここからは、より戦略的な改善を行うために応用的な分析指標をいくつかご紹介します。
リスト成長率は、メール配信リストの増加率を示す指標です。新たに獲得したリード(メールアドレス)の数を把握することで、集客施策の効果やリストの健全性を評価できます。
数値の見方・注意点 |
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一時的にリードの数が増えても、質の低いリードでは、エラーメール率や配信停止率が高まり、リスト全体の品質が低下する恐れがあります。適切な方法で集められたリードかどうかを常に確認しましょう。また、リストの成長率は、配信停止アドレスを差し引いた純増数を基準に評価しましょう。 |
改善のヒント |
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・メルマガ登録フォームの見直し、フォーム完了率を高める ・リードマグネットを活用して質の高いリードを獲得する ・獲得経路ごとのリードの質を比較し、成果の出やすい施策に注力する |
一定期間、メールを開封もクリックもしていないユーザーの数を示す指標です。リストの健全性や成果を維持するためには、こうした「無関心層」を把握し、適切な対応を行うことが欠かせません。
数値の見方・注意点 |
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一定期間(例:3〜6ヶ月)反応がないユーザーを抽出することで、リストの劣化状況を把握することができます。無反応ユーザーを放置していると、メール到達率や開封率を低下させる原因になります。 |
改善のヒント |
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・アクティブユーザーと無反応ユーザーはリストを分ける ・無反応ユーザーを抽出して再エンゲージメント施策を行う ・一定期間反応がないユーザーは配信対象から外すことも検討する |
ステップメールなど自動配信メールからのコンバージョン率を示す指標です。設計したシナリオが成果に結びついているかどうかを判断する重要な目安になります。
数値の見方・注意点 |
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適切に設計された自動化メールは、開封率やクリック率が高くなる傾向がありますが、なかなかコンバージョンに結びつかない場合は、シナリオやコンテンツの内容を見直す必要があります。また、自動化メールは一度設定したら終わりではなく、定期的に効果測定と改善を行うことが重要です。 |
改善のヒント |
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・各ステップごとの開封・クリック・CVを比較分析する ・自動化メールもパーソナライズして配信する ・育成ステップとクロージングステップを明確に分けて設計する |
1つのメールキャンペーンがどれだけの売上を生み出したかを示す指標です。売上金額や平均単価、CV数から算出され、メール施策がどれだけビジネス成果に直結しているかを評価できます。
※この指標については、ECシステムや売上管理システムなど外部ツールと連携し、収益や購買データを統合する必要があります。
数値の見方・注意点 |
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商品単価やキャンペーン内容に大きく左右されるため、指標はあくまで全体の傾向を見るために使いましょう。さらに「1通あたりの収益性」を算出することで、メールキャンペーンごとの配信効率の比較や最適化に役立ちます。 [算出例] CV数:50件、平均購入単価:8,000円、メール配信数:100,000通 平均収益 = 50 × 8,000円 = 400,000円 1通あたりの収益性 = 400,000円 ÷ 100,000通 = 4円/通 |
改善のヒント |
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・効果的なプロモーションやオファーのパターンを検証する ・購入完了までの導線やLPを改善する ・レコメンドメールでアップセル/クロスセルを提案する |
メール施策にかかった費用に対して、どれだけの収益を得られたかを示す指標です。メールマーケティングの効果を総合的に測るために最も重要な指標のひとつです。
※この指標については、ECシステムや売上管理システムなど外部ツールと連携し、収益や購買データを統合する必要があります。
数値の見方・注意点 |
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ROI =(得られた収益 − 関連コスト全体) ÷ 関連コスト全体 × 100で算出します。 関連コストには、ツール利用料、人件費に加え、商品の原価や広告費などの販促コストも含めると、より精度が高まります。 |
改善のヒント |
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・費用対効果の高いメール配信システムを選ぶ ・メール配信の工程を見直し無駄なコストを削減する ・四半期や半期など測定のタイミングを事前に決めておく |
メールの成果が一目でわかる分析画面 |
主な分析指標を把握したら、次は実際の分析プロセスに進みましょう。以下の5つのステップに沿って分析を行い、メール施策の改善につなげていきましょう。
まずは、メール配信後に取得できる分析データを再確認しましょう。開封率、クリック率、CV率、ヒートマップ、GA4との連携など、現在利用しているメール配信システムで「どんな指標が確認できるのか」を把握することが、分析の第一歩です。あわせて、分析画面の見方や操作方法もあらかじめ確認しておくと、スムーズに活用できます。
次に、目指すべき数値目標を設定しましょう。例えば、「クリック率を10%改善したい」「ステップメール経由で月間CVを30件獲得したい」といったように、具体的な目標があると、施策の方向性や改善点が明確になります。
目標設定のポイントは、ビジネスの成果を示す最終目標(CV数や売上)と、それを支える中間目標(開封率、クリック率など)を段階的に設定することです。複数の目標を設定する場合は、優先順位を決めて、順に取り組むことが重要です。
設定した目標に対して、「どの指標を追跡するか」「いつ測定するか」を事前に決めておきましょう。どのメールで何を測定するのかを明確にし、週次・月次などの測定スケジュールをチーム内でルール化しておくことで、分析の精度と効率が大きく向上します。
測定したデータを基に、各指標の傾向や変化を確認しましょう。開封率やクリック率が低下している場合は、件名やリンクの配置、コンテンツ内容など、原因を探ることが重要です。
また、メールの種類(メールマガジン、ターゲットメール、ステップメールなど)によって目的が異なるため、それぞれの目的に応じた指標に着目して分析する必要があります。成果を正しく読み取って、適切な改善につなげる視点が求められます。
分析結果を基に、STEP2で設定した目標の達成度を評価しましょう。数値が改善された施策は、有効な取り組みとして記録します。成果が出なかった施策は、原因となり得る要素を洗い出し、次の改善につなげましょう。
改善策を実施する際は、一度に多くの変更を加えずに、要因を特定しやすい範囲に小さく絞ることが重要です。PDCAサイクルを意識して、改善と検証を繰り返すことで、メールマーケティングの成果を着実に高めていくことができます。
メールの成果が一目でわかる分析画面 |
最後に、メールマーケティング分析でよく使われる代表的な3つのツールを紹介します。
メールの開封率やクリック率、CV率など、基本的な分析データはメール配信システムから取得します。配信機能とあわせて、分析機能の使いやすさや見やすさは、日々の運用において重要なポイントです。
特に、分析画面がシンプルで直感的に操作できると、必要なデータをすばやく把握でき、改善のヒントも見つけやすくなります。一方で、数値が散在していたり、操作が複雑な場合、せっかくの分析データを十分に活かせない可能性があります。
本記事で紹介してきたように、「どの指標を、どのタイミングで見るか」を事前に決めておくことが大切です。分析画面を開いてから「何を見ればいいんだっけ?」とならないように、「チェックリスト」や「レポート記入フォーマット」をあらかじめ作成しておくと効果的です。
毎週確認すべき数値やキャンペーンごとに振り返るべき指標を整理しておけば、分析業務がスムーズになり、習慣化しやすくなります。
メール経由でWebサイトを訪問したユーザーの行動を追跡するには、Googleアナリティクス(GA4)の活用が効果的です。メール内のリンクにUTMパラメータを設定することで、メール経由の流入を識別できるようになります。
これにより、ユーザーが「メール → Webサイト → コンバージョン」へと至るまでの流れを把握できます。その中で、どの段階で離脱が発生しているのかを分析したり、どの施策がコンバージョンにつながったのかを明確にしたりすることが可能になります。
また最近では、UTMパラメータの自動付与機能を備えたメール配信システムも増えています。毎回手動で設定する手間が省けるうえ、人的ミスの防止にもつながるため、こうした機能は積極的に活用するとよいでしょう。
BtoBのメールマーケティングにおいては、CRM(顧客管理システム)や、SFA(営業支援システム)が、メール配信システムで得られたデータを顧客単位でより深く分析する際に活用されます。
例えば、「誰がどのメールを開封し、どのリンクをクリックしたのか」「その後、どのような商談や購入につながったのか」といった情報を営業活動と組み合わせて可視化することで、見込み顧客の育成や、成約までの流れを最適化する手がかりになります。
このように、メールの反応データをCRMやSFAと組み合わせて使うことで、マーケティング施策だけでなく、営業や顧客対応の改善にもつなげていくことが可能になります。
なお、BtoCの場合は、ECシステムや会員管理システムなどのツールが、同様の役割を果たすことがあります。
メールマーケティングは、メールを配信して終わりではなく、その後の「分析」まで行ってこそ効果を発揮します。開封率やクリック率といった基本的な指標に加え、Webサイト訪問後の行動まで追うことで、メールの本当の成果が見えてきます。
とはいえ、日々の業務の中で「分析まで手が回らない…」という声が多いのも事実です。だからこそ、「どの指標を、いつ見るのか」を事前に決めておくことや、自社にあった分析機能を持つツールを選ぶことが大切です。
本記事の内容を参考に、自社のメール分析の方法を見直し、無理なく続けられる環境を整えてみてください。小さな改善の積み重ねが、やがて大きな成果へとつながっていきます。
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メールの成果が一目でわかる分析画面 |