iOS 15のメールプライバシー保護で何が起こる?メルマガ担当者が知っておくべきポイント

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 アップル社が2021年9月21日に予定しているiOS 15のアップデートは、メールのセキュリティ強化を目的とした『メールプライバシー保護機能』が含まれており、メルマガ配信にも影響を及ぼします。この記事では『メールプライバシー保護機能』とは何かについてや、その対策についてご説明します。

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iOS 15のメールプライバシー保護機能とは

iOSについて

 iOSとは、アップル社が自社のハードウェア専用に作成・開発しているモバイルOSです。iPhone Operating Systemの頭文字をとったもので、文字通りiPhoneをはじめとするアップル社のすべてのモバイル機器に搭載されているOSです。iOSは、2021年時点でAndroidに次いで、世界で2番目に広くインストールされているモバイルOSでもあります。

メールプライバシー保護機能とは

 アップル社は iOSの最新バージョン iOS 15を2021年9月21日にユーザーに提供します。その中に含まれる『メールプライバシー保護機能』は、メールマーケティング、メルマガ配信に影響を与える内容です。

 『メールプライバシー保護機能』とは、簡潔にいうと「Apple Mail (アップル社の純正メールクライアント・アプリケーション) のユーザーがメールを開いた(本文を見た)ことを送信者に知られないようにし、またIPアドレスを隠すことで、他のオンラインのアクティビティとの関連付けや場所の特定に使用されないようにする 」という機能です。

 iOS 15にアップグレードした後は、ユーザーがApple Mailアプリを立ち上げた際「メールプライバシー保護機能を使う」といった選択肢画面が自動表示されるようです。

メールプライバシー保護機能がメルマガに与える影響とは?

 『メールプライバシー保護機能』が搭載されると、メルマガ配信者は誰がメールを開封したかをApple Mailでは追跡できなくなります。これはつまり正しい開封率の取得が難しくなることを意味します。

 具体的には、Apple Mailユーザーの開封率の値は上昇することになります。なぜこういった事象が起きるのかをご説明します。

『メールプライバシー保護機能』はApple Mailユーザーの開封率を無効化する

 一般的にメールの開封の有無は、HTMLメールの本文中に埋め込まれた目に見えない小さな画像を使用して追跡します。メールが開封される、つまり本文が読まれると同時にその画像が読み込まれ、その仕組みによって送信者はメールが開封されたことを知ることができます。

 ですが『メールプライバシー保護機能』は、Apple Mailで受信したメールに対し、メールを受信した時に画像をはじめとするすべてのスクリプトやコードデータを事前に読み込むようになります。

 これにより、実際には開封されていないメールが開封されたように扱われ、必然的に開封数、開封率が上昇するというわけです。

Apple Mailユーザーの多くが使用すると見込まれている

 2021年春のiOS 14.5のアップデートでは、ターゲティングや広告目的でアプリやウェブを横断してユーザーを追跡する行為に対し、アプリ利用の前にユーザー側に許可を得る仕様になりました。これを許可したユーザーは、世界平均で20%未満と報告されています。つまり80%以上が追跡行動を許可していません。

参照元:flurry.com : iOS 14.5 Opt-in Rate – Daily Updates Since Launch

 この実績を考慮し、メールマーケティング関連の記事では、大半のApple Mailユーザーは「メールプライバシー保護機能を使う」を選択するという見方が多いです。(実際の数値が公表されたらアップデートしたいと思います。)

AppleのデバイスでもApple Mail以外のメールアプリには影響はない

 メールのテストおよびトラッキングソリューションなどのウェブサービスを提供している、メールマーケティング市場の大手リトマス社は『メールプライバシー保護機能』が開封率に与える影響範囲に対して下記のように述べています。

“この事象は、Gmailや会社のドメインなどに関わらず、デバイスに関わらず、Apple Mailアプリから開いたメール全てに影響します。ただし、iPhoneのGmailアプリのようにAppleデバイスで使用されている他のメールアプリには影響しません。”

引用元::litmus.com : Apple’s Mail Privacy Protection: What This Means for Email Marketers and How to Prepare Now [AUGUST UPDATE]

メールプライバシー保護機能への対策方法は?

 Apple Mailユーザーだけに限定されるとはいえ、メールプライバシー保護機能によって、開封率はメルマガ読者とのエンゲージメントを測定する際の主要な指標とは言いづらくなります。今後メルマガ配信を行う際、この状況に対してどのような対策を取ればよいのでしょうか。

1. 開封率の分析の位置づけ・重み付けを見直す

 メールプライバシー保護機能がリリースされた後は、メルマガの件名のみで価値や効果を判断し、また開封数を基にアクティブな読者を今までのように明確に定義することができなくなるといえます。

 つまり、メールを開封した/しないに基づいて、リストをセグメント化することが難しくなります。たとえばセミナー参加者に関連するトピックのメルマガをいくつか配信し、それぞれのメルマガの開封率によってどのトピックに興味があるかを把握したり、その開封履歴データを用いてセグメントをかけたり、開封をトリガーにしてより興味度合いの高いトピックを送るといった手法が行いづらくなります。

 今後は、こうした行動履歴に伴うセグメントを作成するためのデータは、メール本文のリンクのクリック数から得ることが主流になっていくでしょう。クリック数は開封数よりも絶対数が少ないですが、開封よりも深いアクションを起こしているため、エンゲージメントを図る場合の精度は高いといえます。

 開封率はエンゲージメントを測るのに最適な指標ですが、メールをセグメント化して何が有効かを判断するには、このように他にももっと正確な方法が存在します。これを機にこれらの指標に注視することで、皆さんのメールマーケティング、メルマガ配信の価値がより高まるかもしれません。

2.メルマガで重視するべきデータを見直す

 開封率はメルマガ配信において重要な指標となっていますが、それよりも重要な指標・データは他にも存在します。開封率に影響があった後も引き続きメルマガ配信で注目すべき指標をいくつかご紹介します。

クリック率

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 ウェブサイトへのリンクをメール本文に記載しているのであれば、どれだけのメルマガ読者がクリックしたかクリック数やクリック率によってを計測できます。クリック率が高いのであれば、読者にとって関心の高いコンテンツだったことを意味し、クリック率の値が低いのであれば、関心が低い、もしくはメール本文を見ていないことがわかります。

ヒートマップ分析

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 クリック率は、ヒートマップ機能を用いれば単なる数値よりも深い洞察を得ることができます。メール内のどの位置のどのコンテンツが最もクリックされたかが可視化でき、直感的にメールの効果を把握できます。

サイト全体へのアクセス状況

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 大半のメルマガは、読んでもらうだけではなく目的があります。会員数の増加、ECサイトで購入を促進するなどの場合、ウェブサイトへ集客しなければなりません。そしてメルマガからのアクセスが他のキャンペーン、流入経路と比べてどうだったかを知ることもメールマーケティングの成果を把握する重要な点です。

 当社のWiLL Mailの場合、Googleアナリティクスとの連携が可能なため、メルマガからどれだけのアクセスがウェブサイトにあったかを他のキャンペーンと比較することが容易に行えます。

配信停止(オプトアウト)率

 メルマガは、読者が購読解除を行う方法を必ず明記しなければなりません。様々な方法がありますが、多くのメルマガは配信停止専用リンクを設置しています。配信停止リンクを設置することで、リスト全体からどれだけの読者が配信停止したかを把握できます。配信停止率とも言い換えられます。

 配信停止率の値が低ければ、メルマガ読者のニーズに合っていることを意味します。一方で配信停止率が高くなった場合、無関係の内容を送ってしまっていると考えてよいでしょう。

まとめ

 アップル社がユーザーのプライバシー保護を掲げたのは今回が初めてではありません。メールへの影響はなかったものの、2021年春のiOS 14.5のアップデートでも、ターゲティングや広告目的でアプリやウェブを横断してユーザーを追跡する行為に対し、事前にユーザー側に許可を得る仕様になりました。またGoogleは、自社ブラウザChromeでのサードパーティCookieの廃止を2023年に予定しています。

 このように、今後もテック企業大手によるプライバシー保護、セキュリティ強化の流れはしばらく続くものと予想されます。2010年代はスマートフォン・ソーシャルメディアの10年だったといえますが、おそらく2020年代はプライバシー・セキュリティ強化の10年になるのではないでしょうか。

 それでもメール、メルマガ配信がみなさんが顧客とコミュニケーションをとる際の優れた方法であることに変わりはありません。今回の記事をご参考に改めてメルマガ読者とのコミュニケーションについてご確認いただけますと幸いです。

 当社は引き続きより良いサービスを提供できるよう邁進してまいります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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[付録]その他のiOS 15のメール関連機能について

 最後に、iOS 15によって搭載されるメールプライバシー保護機能以外のメール関連の機能も簡潔にご紹介します。

Hide my Email 機能

 Appleのストレージサービス『iCloud』の契約者は、『iCloud+』と呼ばれる機能を利用できるようになります。このiCloud+内の有料サービスのひとつである『Hide my Email機能』を使うと、ユーザーは実際のメールアドレスではなく、アップル側で生成したランダムなアドレス(『バーナーアドレス』と呼ばれています)を使ってメルマガなどに登録ができます。

 このアドレスにメールが届くと、アップルはメインのメールアカウントにそのメールを転送するという仕組みです。ユーザーは『Hide my Email機能』で作成したメールアドレスを簡単に削除することができます。

 『Hide my Email機能』は、iOS 15、macOS Monterey、iCloud設定で利用できます。

 『Hide my Email機能』も、マーケティング、メルマガ運用で問題が生じる可能性を含んでいます。まず、新規登録してくれたメールが正規のアドレスなのか、それとも『バーナーアドレス』なのかを簡単に見分けることが難しいためです。もし『バーナーアドレス』で登録された場合、ユーザーが簡単に削除できるため、バウンス率(エラー率)が増加するかもしれません。

 エラー率が高まった状態で送り続けると、Gmailなどのサービスプロバイダー側から迷惑メール判定を受ける可能性が高まります。ただし当社のWiLL Mailでは、アドレスが存在しない場合、システム側で自動的に即時配信停止扱いとしますのでご安心ください。

プライベートリレーのアップデート

 『iCloud+』を契約したユーザーは、Safariでブラウジングする際に、位置情報を推測するために用いられるIPアドレスを隠すことができる『プライベートリレー』が使えるようになります。

 『プライベートリレー』のユーザーの情報は取得できなくなるため、もし位置情報をセグメント条件にしてメルマガ配信を行っていた場合、その運用を見直す必要が出るかもしれません。

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