セールスイネーブルメントとは、営業組織内における、営業力の強化と、生産性の向上を目的として実施される、顧客情報、営業ノウハウ、ツール、コンテンツ、トレーニング方法などを統一管理して、営業活動の内容を仕組み化することです。
本記事では、セールスイネーブルメントの定義から、その重要性やメリット、具体的な実施内容、施策を成功させるためのポイントなどについて分かりやすく解説します。
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【目次】
それでは、セールスイネーブルメントの概要から解説していきます。
セールスイネーブルメントは、顧客と接する営業担当者が、営業アプローチをスムーズかつ効率的に進めるために、顧客情報、営業ノウハウ、ツール、コンテンツ、トレーニング方法などの情報を共有し、個々の営業担当者が優れた成果を上げることができるような戦略的な仕組みを構築することです。
顧客と直接接する営業担当者に、適切な仕組みとサポートを提供することによって、今まで営業成績が振るわなかった営業担当者がノルマを達成し、次のステップへと進むことができるようになります。
また、セールスイネーブルメントは、営業担当者と既存顧客との間の良好な関係を構築するためのコミュニケーションの改善と、顧客定着率を向上させることも目的としています。
多くの企業が何らかの形でセールスイネーブルメントと実施していますが、それを組織的な共通の仕組みとして、正しく管理・機能させている企業はまだ多くはありません。
特に営業という業務は、個人任せの部分が多く属人化しやすい傾向にあるため、一部の優秀な営業担当者に依存した状態に陥っている企業も少なくありません。「あの人がいないと困る」「あの人がいないと業績が下がる」と言った状態は、企業としては望ましくありません。
優秀な営業担当者のノウハウを全員で共有する、セールスイネーブルメントの考え方を取り入れることによって、個人に依存した状態を解消し、組織的な営業活動が行えるようになります。これは企業や営業マネージャーにとっては理想的な状態だと言えるでしょう。
セールスイネーブルメントで得られるメリットをいくつかご紹介します。
企業内でセールスイネーブルメントを実現するためには、CRM(顧客管理システム)や、SFA(営業支援システム)といった、顧客データを蓄積・管理するためのツールが欠かせません。
また、営業活動の自動化を行うためのMA(マーケティングオートメーションツール)を導入する企業も増えています。
これらのツールの導入や乗り換えを検討する際には、以下のような点を確認することをお勧めします。
CRM、SFA、MA、コミュニケーションツール、コンテンツ管理ツールなど、セールスイネーブルメントに活用できるツールは数え切れないほど存在します。ただし、営業ツールが多くなり過ぎると、現場の営業担当者が使いこなせないといった問題が発生する恐れがあります。
ツールの中には、大きな投資となるものもありますので、ツールの費用対効果も考慮しながら、効果的にツールが機能するように導入ツールの検討を行う必要があります。
セールスイネーブルメントを実施するためには、大きく分けて以下のような手順があります。
まずは、セールスイネーブルメントの目標を設定する必要があります。既に設定されているKPIなどを基に、KPIを達成するために変更が必要な指標を細かく追跡します。
例えば、以下のような指標の変更を検討してみると良いでしょう。
成約率
営業担当者が抱えている案件のうち、成約した割合。セールスイネーブルメントの目標という視点で、営業担当者間での成約率の差や変動値などの指標を追跡します。
成約期間
獲得したリードを育成・選別し、成約に至るまでの期間。または、マーケティング部門から営業部門へと見込み客リストが引き渡されてから、成約するまでの期間。営業担当者ごとに成約までの期間に大きな差がないかを確認します。
案件規模
営業担当者ごとの受注額の平均値。この指標を追跡する場合、大規模案件の受注に関する営業データを分析し、大きな案件を受注するための戦略やトレーニングをセールスイネーブルメントの施策として実施している必要があります。
ランプライム
新しい営業担当者が100%の戦力となるために必要なランプライム。適切な情報共有やトレーニングの実施などによってランプタイムを短縮することができれば、たとえ経験豊富な営業担当者が退職したとしても、営業生産性を下げることなく、高い水準に保つことができます。
マーケティング部門や営業部門が蓄積している既存顧客のデータや営業担当者へのヒアリング結果を基に、成功している案件の特徴や、成約率の高い営業担当者の行動、成約率の低い営業担当者の行動などのデータを詳細に分析し、セールスイネーブルメントを成功させるための戦略を策定します。
例えば、以下のようなデータを追跡することで、戦略策定のヒントが見えてきます。
上記は一例ですが、目標を達成するために重要だと思うデータを特定したら、徹底的にそのデータを分析して、仮説を立てて戦略に落とし込んで行きます。
目標と戦略を設定できたら、それを達成するためのセールスコンテンツを作成します。セールスコンテンツには、営業用資料、Webサイトのコンテンツ、メールコンテンツなどが含まれます。
どのようなコンテンツが、営業活動を円滑に進め、成約に貢献しているのかを、データ分析や営業担当者へのヒアリングで調査します。もし、成約に貢献していないコンテンツや、営業担当者が使い難いと感じているコンテンツがあれば、コンテンツの改善や削除をすることも検討します。
作成したセールコンテンツは一元管理し、全ての営業担当者が共有・使用できる形で提供します。
顧客と接する営業担当者には、適切な学習、研修、コーチングなどのトレーニングを実施する必要があります。OJTによる現場育成だけでは、体系的な知識やノウハウが身につきづらいため、セールスイネーブルメントを実施する上では、育成対象者には必要なトレーニングを実施することが欠かせません。
各営業担当者は、適切なトレーニングによる支援を受けながら、実際に営業業務を追行し、結果として役に立ったトレーニングと、役に立たなかったトレーニングなどをフィードバックします。フィードバック内容を基にトレーニング内容の改善を続けることで、全体的なトレーニングの質が向上します。
セールスイネーブルメントの実施をスタートしたら、定期的(四半期に1回など)に、セールスイネーブルメントの取り組みが正しく機能しながら成果に繋がっているかどうかを測定してください。
営業担当者の行動や意識に変化があったのか?設定した目標やノルマを達成できのか?などを細かく分析しましょう。上手く機能している部分と、上手く行かなかった部分を特定し、再度データ分析を行って戦略を最適化していきます。
市場や競合環境が目まぐるしく変化する近年、同じ方法で成果を出し続けられる訳ではありません。時間が経っても効果が持続するように、定期的な効果測定と戦略の最適化を実施することが重要です。
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セールスイネーブルメントの導入時には、以下のような課題が発生する可能性があります。
営業部門、マーケティング部門、その他の関連部門で、セールスイネーブルメントを実施する上で必要な情報や行動の同期が取れていないことです。関係部門からの適切なサポートがなければ、導入が遅れたり、失敗する可能性があります。
セールスイネーブルメント戦略を打ち出したものの、現場の営業担当者の足並みが揃わないことです。営業担当者ごとに今までの自分のやり方が存在するため、導入時に摩擦が生じやすくなります。導入前には、新しいやり方への理解やメリットをしっかり説明することが大切です。
セールスイネーブルメントの実施には、CRMやSFAに蓄積される正確なデータを基に、成功するための戦略を策定する必要があります。もしデータの品質が低い場合、セールスイネーブルメントの効果を最大限に引き出すことができません。導入前に必要なデータが蓄積されているかどうかを確認する必要があります。
セールスイネーブルメントは、顧客情報などを他部門で共有しながら施策を進めることがあるため、情報漏洩や不正アクセスなどの、セキュリティ問題のリスクが高くなります。機密情報へのアクセス権など、セキュリティを十分に確保した上で、施策の導入を進める必要があります。
セールスイネーブルメントを軌道に乗せ、円滑に進めるためには、それを主導する専門のプロジェクトチームを構築しましょう。チーム編成は、営業部門、マーケティング部門などの関係部署の上級管理職・実力者・分析スペシャリスト、外部コンサルタントなどで構成します。
また、営業とマーケティングの両部門の経験のある人を経営層から最低1名参加させるのが理想的でしょう。多角的な視点も持ちながらも、トップダウンで施策を推進できるようなチーム体勢を構築することが望ましいと言えます。
当たり前のことかもしれませんが、セールスイネーブルメントを開始する前には、計画したセールスイネーブルメントの実施内容、チーム編成、投資内容、成功予測などを文書化して経営陣に提示し、企業全体としてセールスイネーブルメントに取り組むことに合意する必要があります。
また、営業部門とマーケティング部門に配布するための資料も作成し、全社的なキックオフミーティングを開催しましょう。関係部門の全員が常にセールスイネーブルメントを念頭に置いて業務を追行することが非常に重要です。
前述した通り、セールスイネーブルメントの実施には、正確で質の高いデータが必要になります。そのため営業担当者が日々記録する営業レポートの内容を標準化することが重要になります。
レポート内容は企業によって異なりますが、セールスイネーブルメントチームは、戦略策定に必要な情報を整理し、営業レポートに必ず記載してもらうべき内容を営業部門と相談して合意する必要があります。
営業担当者に行うセールスイネーブルメントのトレーニングは、継続的に実施する必要があります。初めの1回だけ、年に1回だけしか行われないようなトレーニングでは、学んだことや、セールスイネーブルメントの存在自体も忘れてしまう可能性があります。
少なくとも月に1回は、研修やコーチングなどの正式なトレーニングを実施し、実際に現場で生かすことができるレベルの知識やスキルを身につけてもらう必要があります。
また、トレーニングの実施内容についても、日々蓄積される営業データや効果測定の結果を見ながら、改善を続けていく必要があります。
セールスイネーブルメントに適切なツールやシステムを導入することによって、営業担当者の業務を自動化して効率を高めることができます。
例えばリードの行動を自動で集計・分析して、アプローチを掛けるべきリードを自動で選別したり、提案書、見積書、契約書、請求書の作成など、あらかじめフォーマットが決まっているものを自動化するなど、営業担当者が何度も繰り返し行っているような業務を自動化することができれば、大幅に時間を節約できる可能性があります。
その他にも、メール配信システムやチャットボットを使った、営業メールや問い合わせ対応の自動化や、営業レポートの作成・グラフ化なども、日々の日報や週報のデータから自動的に出力できるツールも多く存在します。
ただし、自動化に頼り過ぎて、顧客とのコミュニケーション不足が発生してしまうと、逆効果になる可能性もあるため注意が必要です。自動化に適した部分と、営業担当者が直接行動すべき部分の見極めをしっかり行うことが重要です。
いかがでしたでしょうか。今回ご紹介した内容なセールスイネーブルメントの序章に過ぎませんが、営業部門の営業力や生産性をさらに強化するためには、セールスイネーブルメントが効果的で、試してみる価値があるということはお分かりいただけたのではないでしょうか。
まずは、各営業担当者の抱えている要望や問題点を把握するところからスタートし、慎重にセールスイネーブルメントの実施を計画してみてください。
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