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ストーリーが加わると商品価値が60倍以上に -マーケティングにおけるストーリーテリングの重要性-

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 歴史に残る映画や小説には優れたストーリーテリングが存在します。観客を感動させるストーリーテリングを作るには、ヒトの感情、動機、心理学を深く理解する必要があります。そして顧客・見込み客をもてなすウェブコンテンツを作る際にもストーリーテリングの手法は欠かせません。この記事ではストーリーテリングの重要性やマーケティングにおける活用事例などをご紹介します。皆様のお役に立てば幸いです。

ストーリーテリングとは

 ストーリーテリングは、演劇などの物語(ストーリー)を共有する際の社会的・文化的活動と言えます。 人類のすべての文化には独自の物語があり、娯楽や教育、文化の保存、さらに道徳的な価値を浸透させる手段として共有されています。

 「ストーリーテリング」という言葉は、口頭でのストーリーテリングという狭義の意味と、物語を広げたり開示したりするために他のメディアで使用される技法を指す広義の意味も持っています。

ストーリーテリングが重要である証拠

1.ストーリーによって商品の価値は60倍近く変わる

 ロブ・ウォーカーとヨシュア・グレンによって行われた「significant object(大切なもの)」プロジェクトは、ストーリーテリングの強さを証明した有名な実験の一つです。彼等の実験とは、平均1.25ドルの安物の骨董品をeBayで売る際に、商品説明に個人的な物語を追加することによって、大きな利益を上げることができるかどうかというものでした。

 彼らの仮説は、感情的な話は各物の知覚価値を高め、それゆえ売られたそれぞれの品物に大きな利益をもたらすだろうというものでした

 実験を行うために、彼らは129ドル相当の安い品物を購入し、200人以上の作家の協力を得て、それらの商品にまつわるニセのバックストーリーを添えてもらいます。例えば、99セントで購入した馬の置物の場合、作家の父親にまつわるフィクション、70年代のフランスの酔っ払った交換留学生と馬との奇妙な体験談を添えました。

 この結果、99セントで買った馬の置物をなんと62.95ドルでの転売させることに成功し、ストーリーを付加することで、モノの価値を6258.58%高める結果となりました。その他のアイテムも同じような利益率で販売され、プロジェクト全体では合わせて8,000ドル近くの利益をもたらしました。

2.CMの視聴者が引き込まれるのはコンテンツよりもストーリー

 ストーリーテリングにはとてつもない力があります。2014年、ジョンズ・ホプキンズ大学の研究者は、米国で最も視聴率の高い番組のひとつスーパーボウルのCMにおいて最も人気が高いCMが、バドワイザー社の、同社のシンボルでもある馬にまつわる物語にフォーカスしたものだったと発表しました。

 つまりコマーシャルのコンテンツではなく、コマーシャルの構造がカギを握ることを証明したといえます。

ストーリーテリングに欠かせないフレームワーク『フライタークのピラミッド』

引用元:Learning Freytag’s Pyramid: 5 Cool Examples of How to Use It in Marketing

 ストーリーテリングにはいくつかの基本となる型が存在します。最も古典的で有名なものが『フライタークのピラミッド』というフレームワークです。ドイツの作家フライタークが提唱したこのフレームワークは、ドラマは5つに分割でき、それぞれに機能があるという考えに基づいています。

 具体的には、序幕、上昇、クライマックス、下降、破局がその五段階となります。自身の考えやアイデアをこの5段階に当てはめていけば、うまく物語としてまとめることができるというわけです。古代ギリシアの哲学者アリストテレスの「詩学」もこれに当てはまりますし、シェイクスピアはこの構造をマスターしたと言われています。

 上述のバドワイザーのCMもこの構造に当てはまり、ジョンズ・ホプキンズ大学の研究は、こうした古典的なフレームワークを用いた完璧なストーリーを伝えた広告が、近年においても最も人気があることを発見したというわけです。

3.物語のハッピーエンドはドーパミンを生成する

 こうしたアンケート調査だけでなく、ストーリーテリングがなぜ人を惹きつけるかを科学的に証明した研究結果も存在します。ストーリーテリングは強い神経反応を呼び起こします。神経経済学者のポール・ザックの研究によると、私たち人間の脳は、ストーリーの中でストレスホルモンのコルチゾールを作り出し、それが集中力を保たせること、また可愛い犬などの動物を見ると、共感を促進するオキシトシンを作り出すがわかっています。

 また他の神経学的研究は、ハッピー・エンドのストーリーが私たちの脳の報酬(欲求)を司る辺縁系にドーパミンを放出させるきっかけとなることもわかっています。

共感を促進させるオキシトシンが高まると、お金を寄付する可能性も高まる

 父と息子にまつわる感情的な映画を見た後の実験も同様の事象を証明しています。オキシトシンとコルチゾールの両方が効いている実験の参加者に対して、見知らぬ人にお金を寄付するように依頼したところ、オキシトシンの量が多い人は、そうでない人よりもお金をあげる可能性がはるかに高くなりました。

4.ストーリーテリングには症状を改善させる効果もある

 態度や行動を変えるために、戦略的なストーリーテリングも働きかけています。ヘルスケア業界からの2つの研究がその力を示しています。ペンシルベニア州立大学医学部の研究者らは、痴呆症患者への医学生の対応が、患者の状態にもっと同情的になるようなストーリーの説明を聞いた後に、大幅に改善したことを見出しました。

 また、マサチューセッツ大学医学部の研究では、ストーリーテリング・アプローチが、高血圧の危険性の高い人々の習慣を変え、血圧を下げることを説得するのにも有効であることがわかりました。

記憶とストーリーテリングの関係

 これまで述べてきた通り、商品を売る際やコミュニケーションにおいて、ストーリーは大きな役割を果たします。そしてウェブ・マーケティングにおいてもそれは同様です。もし自社のキャンペーンにおけるコンバージョンが少ない場合、一般的なファネルだけでなく、ストーリー的な側面における訴えかけを見直してみることも重要かもしれません。

 POSアプリケーションの『Clover』のウェブCMは、ストーリーテリングを用いた好例といえます。会計、社内IT、マーケターなど自らが異なる複数の職種をこなさなければならない小売店のオーナーが、Cloverを導入することで、彼ら(オーナー以外の仕事をする自分自身)を解雇していくというユーモラスな内容です。

 このように、ストーリーを使って見込み客の記憶に残る顧客体験を創造することは、見込み客が問題解決するタイミングが来たときに自社製品を思い出してくれる際に必要であるため、セールス・プロセスにとっても不可欠といえます。こうしたプロセスを構築する際には、人間の記憶がどのように機能するかを知っておくことも重要です。なぜならば、人間の記憶のプロセス別に最適なコンテンツを作成することが可能になるためです。

 人間の記憶のプロセスは3つの部分に分けることができます。エンコーディング、ストレージ、そして検索です。

引用元:Sense and Sensation

ステージ1 – エンコーディング

 エンコード(符号化)は、記憶のプロセスの最初の段階です。人は情報が精神的に処理できる形式に変換されると、エンコードが行われます。 外部から入手した情報は刺激として人の感覚に常に届いています。 エンコーディングとは、それらを記憶に格納できるように、刺激を別のものに変えることを可能にします。

 これは本を分類して棚ごとに分けることに似ています。 図書館で本を簡単に見つけられるように本をエンコード/ラベル付けしているように、情報を記憶に入れる前に情報をエンコード/ラベル付けします。これが第一のステージです。

ステージ2 – ストレージ

 ストレージ(保存)とは、情報を長期にわたって保持することを意味します。ここでエンコードされた情報の恒久的な記録が作成されます。これが第二段階です。

 わたしたち人間は、感覚記憶、短期記憶、長期記憶という3つの主な記憶領域に情報を蓄積できると考えられています。 情報は3つのメモリシステムに順次記憶され、記憶領域は時間枠に従って変化します。 情報が保持される期間は、ほんの1秒から数年です。 感覚的記憶はほんの一瞬だけの情報を記憶し、短期記憶はより長い間情報を保持することができますが、通常約30-45秒だけです。 しかし、長期記憶は一生保持できる場合もあるほど長いです。

ステージ3 – メモリ検索

 検索(Retrieval)は、記憶されている情報を記憶から呼び出すプロセスです。 基本的には、長期記憶から情報を取り出し、それを改めて意識づけさせることを指します。

 検索には「認識」と「想起」の2つの方法が存在します。

1.認識

 「認識」は、以前に経験したことのあるモノとの関連付けといえます。認識プロセスは、感覚的な合図に対する反応として始まります。何かを見た際、自分の記憶に保存されている情報とそれを比較することで、認識が可能になります。たとえば外出した際に誰かに出会い、それが以前見かけた人だと認識する そういった一連のプロセスがこの認識です。

2.想起

 「想起」は、手がかりなしにメモリから情報を検索することです。 たとえば誰かがあなたに質問をした場合、あなたはその答えを思い出すために記憶を探さなければなりません。 それには、現在物理的に存在していない事実、出来事、またはその他の情報を思い出すことが含まれます。

 脳は複雑な場所です。それがどのように機能するかを理解することは、あらゆるレイヤーにおいて戦略を立てる際にも役立ちます。

ストーリーテリングのコツ

 では、顧客を説得力させるストーリーテリングは、実際にどのように作っていけば良いのでしょうか。ハーバード・ビジネス・レビューのウェブサイトで語られていることを簡単にピックアップしてみました。

1.メッセージから始めよう

 誰が自分の観客か。彼らに伝えたいメッセージは何か?全てのストーリーはこの問いかけから始まる。

2.自分の経験を遡ろう

 優れたストーリーテラーは、メッセージを伝える際に自分自身の記憶と経験を遡る。自分の人生で起こったどんな出来事を共有したいと考えているだろうか?自分のキャリアの成功に繋がった瞬間や、親やメンターから教わったレッスンを思い出そう。

3.自分自身をヒーローにしないこと

 あなたが仮に運転手付きの車や数億円の資産を持っていたとしても、それは読み手に関係のないこと。自分自身の経験を元にしつつも、自分自身を語ることは避けよう。

4.葛藤・挑戦を強調しよう

 挑戦のない物語は面白くない。物語には対立や葛藤が必要であることを優れたストーリーテラーは理解している。

5.シンプルさを心がけよう

 ストーリーが必ずしも壮大で驚きに満ち溢れている必要はない。世界で最も成功し、記憶に残る物語の多くはシンプルで直接的なメッセージを含んでいる。不必要なディティールは、あなたのメッセージを損なう可能性もある。

引用元:How to Tell a Great Story

まとめ

 古くから物語にも使われ、近代では商売おいても大事な役割を担うストーリーテリングの重要性、役割、基本的な構造についてご紹介しました。近年はソーシャルネットワークサービスの台頭によって、「1 対 複数」という伝統的な構造から「複数 対 複数」という様式も誕生し、新しい役割や効果も示唆され始めています。

 言葉が大きな役割を担うメール配信システムを提供する当社では、今後も定期的にこのストーリーテリングの手法や役割をお伝えしていきます。また、わたしたち自身のマーケティング活動においてもうまく活用できるよう日々調査を行っていきます。

 そして、2019年からソーシャルメディアに代わり、改めてメッセージを届けるツールとして注目を集めるメールマガジン・ニュースレター。それらを簡単に運用できるツールとしてWiLL Mailを提供しています。ご興味があればぜひお声がけください。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

著者
WiLL Cloud マーケティングチーム

ウェブマーケティングに関する情報をお届けするブログです。皆様に役に立つ情報、アップデート、イベントなど、様々なことを発信します。

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